山行期間 | 2020年12月29日〜12月31日 |
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メンバー | SKD、ITS、DIS、DIA、YSD、SMD、YAG、TKD、YMS、KSK |
山行地域 | 木曽駒ヶ岳 |
山行スタイル | 積雪期登山 |
当初の年間計画では80期Bチームの冬合宿は白馬岳の予定であり、その偵察山行も行っていた。しかし諸々の事情もあって1泊2日の山行となり、リーダー陣が色々と検討してくださった結果、行き先は木曽駒ヶ岳となった。ルートは上松A尾根のピストン。年末寒波の到来が予想されており、非常に厳しい山行になると覚悟して臨む事となった。
12/29(火)
21時半に三国ヶ丘、天王寺にそれぞれ集合し、車で長野県に向かう。今回は登山口に比較的近い場所で仮眠場所とさせてもらった。ちょうど雨が降りはじめていて、翌日からの山行に不安を抱きつつ仮眠をとった。
12/30(水)
6:00起床。まさかの本降りである。雨に打たれて冬山に登ると、あとで全てが凍りついてしまう危険が予測される。様子を見たが雨足は弱まらず、とりあえず登山口まで車を移動させる。前日まで比較的気温の高い日が続いたせいか、登山口は標高1085mほどだが雪が全く無く、相変わらず雨が降り続いていた。なかなか雨はあがらず、結局10時頃になって雨が弱くなったのを見計らって出発となった。
本日の予定は標高約2600mの8合目付近で、そこで幕営だ。眺望も何もない樹林帯の登山道を黙々と登っていく。まるで金剛山のようだ。
全然雪が無く、寒波も来ていないため気温が氷点下にもなっていない。僕はドライレイヤーにウールのベースレイヤー、薄手のフリースにハードシェルで登ったが、暑い。暑すぎる。比較的汗をかきにくいが、それでも上半身がしっとりする程度には汗をかいてしまった。他のメンバーではビシャビシャになるほど発汗する者もあり。
コロナの影響でトレーニングを充分に行えなかったメンバーもいて、1名が非常に疲労して遅れがちになるなどあり、全体のペースは上がらず。4合目くらいから登山道には少しずつ雪が見られはじめ、12:40頃5合目の金懸避難小屋のあたりでは少ないながらも全体に積雪していた。
気温も下がってきて風が強まり、軽く吹雪く様相。遅れが出たメンバーをここで待機していたが、身体がどんどん冷えていく。個人的には足指が寒さで痛くなってきて、全身を汗で濡らした者には過酷な汗冷えが襲ってきた。さすがに吹きっさらしで待機するのは低体温症を招く危険があり、避難小屋の入口に文字通り避難。しばらく待って全員が揃ったのち、リーダー陣でどうするか少し協議し、13:10目的地に向けて再出発となった。
しかし、どんどん寒さは増してくるし、積雪も増えてくるしでペース上がらず。ダラダラとした登りでなかなか辛い。
15:00で時間切れとなり、6合半と7合目の間、標高2220m地点で幕営適地を見つけテントを張った。
雪は降っておらず風も無かったが、テントを設営して入り込むまでの間も足元は無茶苦茶寒くて、足指がジンジンして痛い。寒さは痛さとして感じるという事を身をもって知った。テント内はやはり暖かく天国。
狭くて足がツりまくるのは玉に瑕だが、水を作り、夕飯を食べ、穏やかな時間を過ごした。今夜から明日にかけて、更に明日の午後以降は寒波襲来の影響で天候は荒れる見込み。不安を覚えながらの就寝となった。
12/31(水)
大晦日である。4:30出発のため3:00に起床。予想に反して夜間に雪はあまり降っていないようで、テント周辺の積雪状況はほぼ変わらず。気温も無茶苦茶下がってはいないように感じた。それでもテント内の結露は凍りつき、前日までに湿ったザックや濡れた衣類など、あらゆるものが凍っていた。気温はわからないが、−10数℃くらいではなかろうか。とにかく朝食を食べ、準備をして出発だ。アタック装備で登頂を目指すため余計な荷物はテント内にデポし、テント撤収もしなくていいので比較的時間に余裕はある。とは言え、アイゼンの装着に手間取ったりしているうちに予定時間を過ぎてしまい、結局4:40幕営地を出発。
それほど寒くないなと思ったのは最初だけで、足指と手指の末端が痛い。いや、体はそれほど寒いと思わないけれど、末端だけが異様に寒くて痛い。特に足指が痛くて堪らない。歩いていれば血行も良くなって痛みは消えるかと期待して出発したが、これがなかなか治らない。登るほど積雪は増えてくるわけで、トレースも無いため、ラッセルというほどの事はなくても先頭は結構キツイ。当然ペースは上がりにくい。そのため後続は体が暖まらない。
加えて遅れの出るメンバーもあり待機の時間も多くなる。全然血行が回復せず、足指の痛みがひかない。少し回復をしたかと思うと、あっという間にジンジン痛くなってくる。スリーシーズンであればジッと立っていても特になんて事ないが、気象条件が厳しい冬山ではただ立って待機しているのは本当に地獄だ。必死で靴の中やグローブの中で指を動かすものの、悲しいほどに痛みがひかないのだ。凍傷になってしまうかもという恐怖もあった。
6:30頃、ようやく1日目の目的地であった8合目に到着。標高は約2600m。ここらが森林限界となり、この先はいよいよ厳しい稜線だ。幸いというか何というか、意外に風は弱く、極限的な状況ではなかった。それでも稜線にそってプチラッセルをしながらトレースをつけていくのは、かなりキツイ。
息が上がる。雪面がクラストしていて歩きやすいかと思いきや、時々股まで強烈に踏み抜く。足指の痛みも取れない。キツイが、必死で雪にもがく行為は雪山を登っている事を実感させ、なんとか上まで行ってやろうと発奮する事にもなった。だが7:00。標高2640m地点でリーダーから撤退が告げられる。
かなり疲弊したメンバーもいるし、午後から天候が荒れる見通しもあるし、様々に状況を考えた上での判断であった。テントを撤収して安全に下りるには、残念ながら時間の余裕がなかった。もっと上まで行きたいし、できれば頂上も踏みたい。せめて木曽前岳くらいまで行きたい。しかし足指の痛みがずっと取れないままだったのでそれ以上進み続けるのが怖く、安堵する気持ちも同時にあった。
ともかく下りると決まればサッサと下りるに限る。自分たちで付けてきたトレースをたどり、黙々と下る。途中、8合目で集合写真を撮っていただいた。敗退記念の写真となったが、それが今の我々の実力という事だ。
いつか同ルートでリベンジしたいとの言葉も聞かれた。8:30頃、幕営地に帰着。テントを撤収して少しだけ休憩。冬山では休憩はゆっくりできない。寒くて堪らないのだ。快調な下りのペースでやっと回復していた足指も、テント撤収している間に再び痛すぎる状態に逆戻り。本当に止まっていられないというのを身をもって知った。
その後も良いペースで下り続け、10:30頃に金懸避難小屋へ。
晴れ間も出て日が差し、風もないので気持ち良い。標高を下げると気温も上がるため、もう足指は気にならなくなった(とは言え休憩などで止まっていると、やはりジンジン痛くなってくる)。前日と違っていたのは積雪。往路では全く見られなかった積雪が、登山口まで完全に続いていた。やはり昨晩でけっこう雪が降ったようだが、幕営していた高度ではあまり降らなかったという事だろう。そういうわけで下山は最終盤までアイゼンを付けたままだった。下りで遅れたメンバーも無事下山して、13:00登山口に帰ってきて終了。なにはともあれ全員が大きな怪我なく冬合宿を終えられて良かった。
第5ステージを担当してくださったリーダーの皆様、ありがとうございました。どのような状況になっても最大限のサポートをしていただいたと感じています。今回学んだ事を生かして第6ステージに向かいたいと思います。