山行期間 | 2014年8月13日(夜)から16日 |
---|---|
メンバー | OSM、SGY、KWI、TKH、UET、TKD、MSD、MKM、KBT |
山行地域 | 北アルプス |
山行スタイル | 縦走 |
「槍ヶ岳」なんと響きのいい山名なんだろう。山登りを始めた頃から一目でそれと分かるその「山容」に憧れ、「いつかは自分もその頂に」と思っていたことが、今まさに現実のものになろうとしている・・・
8月13日(水)
午後8時。いつもより1時間程度早く三国・藤井寺の2班に分かれ集合。多賀SAで合流し、お盆期間の渋滞影響もなく順調に新穂高温泉・中尾高原口駐車場に到着。当初、新穂高温泉に1台デポする予定であったが、中尾高原ですら満車状態のことから、新穂高へのデポは諦める。すぐさまテント設営し、明日にむけ早々に就寝。
8月14日(木)
5時起床。各自身支度を整え、6時出発。今日の行動予定は、クリヤ谷からクリヤノ頭を経由し笠ヶ岳まで登り一辺倒、約9時間の行程となる。前日に高山警察登山指導センターに渡渉の状況を確認していたので、予定通り「新穂高の湯」を右手に見ながら、登山口に取り付く。
鬱蒼とした樹林帯を進み、ほどなく一カ所目の渡渉点に到着する。水量はさほどでもないが、踏み石が微妙に水没しており、渡渉方法をどうするか、選択が難しい。裸足になるか?そのまま行くか?各自がそれぞれの方法で通過を試みる。この程度水量でどのような状況に陥るのか、いい経験になった。
しばらく進むと、樹林の間から「錫杖岳」がみえる。僧侶が持つ錫杖の頭の部分が山体に似ていることから名付けられたようだか、断崖絶壁にしか見えない。東側のエボシ岩など、ロッククライミングの対象となるルートがいくつもあるとのことだが、登れる日が来るのだろうか?自分もいつかは経験を積んでチャレンジしてみたい。
その後、時折強まる雨脚の中、粛々と歩き続けるが、視界もなく疲労がどんどん蓄積していく。相変らず雲は低く垂れこめ、新穂高ロープウェイは見えても、西穂高岳が現れることはなかった。せめてもの救いは、短い夏に咲き誇る「イワカガミやニッコウキスゲ」等の高山植物が滅入る気持ちに刺激と活力を与えてくれた。
16時、「笠ヶ岳」山頂に到着。相変らず視界はなく、集合写真を撮影しテント場へ移動。途中、雷鳥の親子が現れ、疲れ切った我々に労いをかけてくれたように思う。そして夕食。今回の担当牧村さんは、ネット等から情報を収集し、ひと工夫加えたデザート共に軽量ながら山でいただくには豪華な食事(今夜は、クリームリゾット)を提供していただき、その努力に感謝しつつ皆で美味しくいただく。夕食後は、今日の反省を振り返りつつ明日以降の行程を意識し、7時過ぎ眠りにつく。
8月15日(金)
3時半起床。
昨夜から降り続く雨音に何度も起こされながらも、浅い眠りであったが疲労は回復している。早々に朝食を済ませ、午前5時テント場を出発。雨脚は強くはないが、相変らず視界はほとんど無い。笠ヶ岳から双六岳の縦走は、穂高連峰が見渡せる絶景ルートとなる予定ではあったが、なかなかうまくはいかないものだ。
ガスにつつまれた縦走路を、ひたすら進む。ほどなく「抜戸岩」にさしかかる。稜線上にある奇岩であるが稜線の両サイドを覆って風雪を防げることから、厳冬期等の緊急時にはビバークポイントになることをリーダーから教わる。笠新道分岐、秩父平、弓折岳と降りしきる雨の中、全員びしょ濡れの状況で11時過ぎ双六小屋に到着。
この2日間雨に打たれ続け、ザック・ウェア・靴に至るまでびしょ濡れになっていること、明日以降の行程のことを考え、小屋泊を期待したが、現実は厳しかった。このような悪条件を克服し、経験を積むことが「合宿本来の主旨」であることを踏まえれば、リーダーがテント泊としたことは理の当然と思う。(自分の甘さに反省)
雨脚が弱まるのを少し待っていたが、状況が好転することもないので、強風が吹くなか、テントの設営を開始する。今まで経験したことのない、強風の状況でいかに効率的に手際よくスピーディに設営するか、持てる技術を駆使し設営に取り組む。強風下では、一瞬でも油断すると簡単にテントが飛び去ってしまうので、必ず誰かがテントを確保しておかねばならない。多少のもたつきはあったものの、この悪条件を考慮すると意外とスムーズにできたと思う。しかし、張り綱の固定は甘く、これはもう少し練習しておく必要があると感じた。テント設営後、アタックの待機。雨脚は弱まるどころかさらに強さを増し、雷も鳴り出しピークハントを断念。
夕食の準備をしつつ、大島CLが記入する天気図に見入る。秋雨前線が停滞し、さらに九州北部にある低気圧が東に向けて進んできている。あくまで予測であるが、明日も好転の兆しが見えない。この時期、勢力の強い太平洋高気圧が張り出し、例年晴天が続くことが多いと思うが今年は何かが違うようだ。この日も早々に夕食を済ませ、ほのかな期待を胸に明日に備える。
8月16日(土)
本日も3時半起床。
昨日に引き続き一晩中、叩き付ける雨音に心を打ちひしがれながら朝を迎える。天気はより一層悪化している。出発の5時を少し遅らせる。その間リーダー陣は今日の行程について検討。結果は、「秋雨前線が停滞しているとともに、低気圧が接近してくることから天候がさらに悪化方向にあること」「この3日間で、合宿の所期の目的はほぼ達成していること」「悪天によりピークハントは流動的でありリスクが高い」等から「槍ヶ岳」に向かわず弓折岳~鏡平経由のエスケープルートで下山することとなった。5時半テントを撤収し、新穂高に向けて出発。雷と雨脚が強くなる中、12時に新穂高温泉に到着し、夏合宿を終える。
今回の合宿では、憧れていた「槍ヶ岳の頂」には到達できず、絶景を手に入れる事は出来なかったが、それ以上に、「これから向かう頂」への武器となる技術や経験を手にすることができたと思う。好天の山行では、経験することのない様々な出来事を経験でき、雨続きの3日間であったが、スキル面で得るものも多く、内容の濃い夏合宿であったと思う。
今回の山行に際し、参加できなかったメンバーに、自分が気づいた反省点を以下にまとめる。
・情報収集:危険個所(今回の場合は渡渉)は、状況によっては、直前に再度確認する。
→登り始めて、渡れなければ数時間のタイムロスとなり、全行程に影響。
・体調管理:山行の日程が決まっているので、その日に合わせ摂生するなど体調を万全にする。
→体調不良で臨み、無理に参加すれば自分も苦しいだけでなく全員に影響が出る。
・個人装備:計画書に記載されているもの以外は、原則持ってこない。
→個人的に持ってきても、使わなければ不要な荷物(行動力に影響)
・共同装備:嗜好品は適量に
→大量にあっても、使う機会がない。必要量以外は、次回に回す。
・防水対策:濡れてはいけないもの(マテリアル)のパッキング
→濡れてはいけないことは、理解していても、濡れればどうなるか理解しておくこと
一泊なら凌げるが、連泊になると回復が難しい
一旦濡れたものは、雨が続く限り乾かない。(ダウン:シュラフ・防寒着等)
・パッキング:濡れるものと、濡れてはいけないものの扱い
→精密機械(携帯・カメラ等)地図・紙幣等、しっかりしたビニール等で二重に防水
・衣類の素材:購入時に素材を必ず確認すること。
→綿素材が入っていると、着干しができない。(ぬれたままで、乾かない)
・テント設営:手順・留意事項を理解しておくこと。
→強風時は、本体・フライ等飛散する場合があるため、必ず誰かが確保する。
収納袋も同様に紛失する恐れがあるので、地面に置かない。
・地図(読図):自分で読めるよう努力は怠らない。
→最初から読むことは難しいが、いつも人任せにしていると上達はあり得ない。
・ルーファイ:地図・踏み跡・標示・看板等情報を利用し、自分で考えてみる。
→都度、リーダーに聞くと上達しない。(間違っていれば、必ず指摘がある)
・進退判断:Bチームメンバーが判断することはないが、リーダーが判断に至った理由を理解しておく。
→様々な制約や条件、諸般の事情等、今後自分で判断が必要となった場合の経験則として活用する。
時間記録
8/14 6:00中尾高原口→8:30 1475m→9:40 1780m水場→11:00 2020m→13:00雷鳥岩→14:20 2520m→ 15:50笠ヶ岳山 頂→16:10笠ヶ岳山荘
8/15 5:00出発→5:50笠新道の分岐→7:10秩父平→9:10弓折岳→9:35弓折 乗越→10:50双六小屋
8/16 5:40出発→6:45弓折乗越→7:35鏡平山荘→9:05 1860m→10:40わさび平→12:00新穂高温泉