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剱岳 チンネ左稜線25/07/28

山行期間 2025/7/18〜7/20
メンバー SOT NGS TKD
山行地域 剱・立山連峰
山行スタイル アルパインクライミング


 7月の3連休、あえて金土日で剱岳へ行ってきました。SOTさんたっての希望でNGSさんにご一緒いただき、これを機会にと僕もメンバーに加えていただきました。
NGSさんは過去にチンネを経験済み。SOTさんは以前から念願のチンネ左稜線。僕はというと剱岳すら初めてなのでピークを踏むのを楽しみにしていました。

トレーニングとして御在所岳と雪彦山に行きましたが、雪彦での弓状クラック登攀は自分たちの実力を大きく超えており、マジで半泣きで登りました。フォローも凄まじいA0、A1を連発し、もはやクライミングとは言えない醜態を晒したものですが、「あれに比べりゃチンネなんて余裕でしょ」という倒錯した自信をつける事ができたのでした。
実際、チンネ登攀で困ることはなかったですが、それ以外のところでヒドイ目に会う事、この時は知る由もありませんでした。

7/18(金)
 初日は熊の岩のまでアプローチ。
8:30室堂を出発。ミクリガ池で写真撮影、雷鳥沢で快適なキャンプサイトに感激なんかしつつ、ヘイコラ言いながら重荷に耐えて剱御前小屋への登りをこなす。せっかく登ったのに、今度は剱沢まで盛大に下る。剱沢キャンプ場を過ぎたあたりでアイゼンを装着し、まだまだ下る。

そして長次郎谷出合へ。出合から雪渓を見上げ、分かってはいましたがその延々と続く急登に絶望。「これ登るんか…嫌やなぁ…」と弱音を漏らすが登るほかないので、もうとにかく無心で足を動かします。
そうすると、どうでしょう。気づけば熊の岩まで来ていました。かなりしんどかった気もしますが、あまり覚えていません。少し気絶していたのかもしれませんね。
我々のほかに2パーティがテントを張っていまして、1パーティはチンネに行かれるそうです。もうひとつの若者パーティは本峰を経由して上から熊の岩にアプローチしたそうで、そんな方法もあるんだなと感心しました。翌日は八ツ峰のAフェースだかCフェースだかを登るようです。
15:00頃には熊の岩について、のんびりできました。



7/19(土)
 3:20に意気揚々とBV地を出発。長次郎谷右俣をしんどいながらも順調に池の谷乗越に向かっていたのに、運命とは非情なものです。なんと最上部でクレバスに阻まれ、上に抜けられないではないですか。そんな馬鹿な。僕はこの時点で全身脱力してグニャグニャになりそうでしたが、さすがNGSさん、 SOTさんは違いました。『いったん下りて全装担ぎ、左俣を登る!』この力強い決断に一瞬だけ「マジかよ…」と思いましたが、それよりもまだ可能性が残されている事を喜ぶべきだと思い直しました。
そういうわけで、今度は重い荷物を背に左俣を登ります。右俣よりはマシなものの、左俣もやはりクレバスは発達していました。一ヶ所、本当に垂直(薄くかぶってる?)くらいの小雪壁をダブルアックスで越えたのに、またもや最上部でクレバスが左岸から右岸を貫き、雪渓が途切れているではないですか!そんな馬鹿な!また僕は全身がグニャグニャになりそうでしたが、さすがNGSさんです。左岸のシュルンドから岩づたいに降りるルートを発見してくださり、少し登って無事雪渓に復帰。登り詰めて7:15に長次郎のコルに着いた時は感動と達成感で、もうチンネとかどうでもいいよとちょっとだけ思ってしまいました。


いや、ここに何をしに来たのか思い出せ!と自分を叱咤し、荷物をデポ。アタック装備となって北方稜線を下ります。ルートの読みにくさはありますが、北方稜線は歩くのが楽しい道で気に入りました。
8:45そんなこんなで夢にまで見た気がする池の谷乗越に到着。雪渓さえ切れてなければ数時間前に着いていたはずなのに…と恨み言を言いたい気持ちをグッと抑え、池の谷ガリーを下ります。
聞いていた通り池の谷ガリーはひどい浮石の連続で、すごくストレスのかかる下りでした。しかも思ったより三の窓まで長い。
9:45に到着した三の窓は、なるほど、BV適地でした。目の前にはチンネが聳え、先行していたとみられるパーティが2組登っているのが見えました。


  • 長かった…ここまで遠かった…!熊の岩から三の窓まで、すでに6時間半もかかっているにも関わらず、やっとこれからクライミングなのです。12ピッチもあるのに。
    恐ろしい三の窓雪渓のトラバースをこなし、運良く繋がった雪渓をおりて岸壁へ。(ここもシュルンドが大き過ぎて、取付に行けないかと思いました。ラッキーだった。)

    ここからチンネ左稜線を登攀します。
    最初の4ピッチは SOTさん、中間4ピッチはNGSさん、最後の4ピッチをTKDがリードを担うことにしました。リードしたくないと駄々をこねる SOTさんをなだめつつ11:20クライムオン!
    最初のピッチは岩が脆くなっているところがあり、かなり大きな落石があったときは本気でヤバイと思いましたが、NGSさんも僕もなんとか無事でした。
    その後は危なげなく登っていきましたが、今ひとつ終了点がわかりにくいピッチもあり、結局 SOTさんは5ピッチ登りました。
    次にNGSさんがリードで中間部。グレードでは1番易しいセクションですが、トポでいう8ピッチ目、林立するピナクルは結構難しく、本当にⅢ級?という感じでしたし、ここもピッチの切り方が難しく、結局NGSさんも計5ピッチを登りました。
    そして佳境、核心の11ピッチ目(トポでは9ピッチ目)は2つの小ハング越えです。予想どおり、雪彦の弓状クラックより遥かに簡単でした。が、そこは一応Ⅴ級。想像していたよりは悪く、結構緊張しました。というか弓状クラックと比較するのは、内容的にどう考えても間違ってます。終盤は易しいクライミングですが、僕もピッチを中途半端に切ったところがあり、計5ピッチ登ることに。
    結局3人で15ピッチのクライミングとなりました。

    何に驚いたって、3人全員がトップアウトした時、18:00になっていたことです。まさかそれほど時間を使っていたとは。ヤバイ。暗くなってしまうぞ。
    ここから2回懸垂下降して池の谷ガリーに降りるのですが、痛恨のミスをしてしまいました。おそらくここだろう、という捨て縄から僕が懸垂したのですが、見事にロープの回収ができない状態に。上からロープの引き上げはできたので、NGSさんは改めて別の支点から懸垂。続いて SOTさんも懸垂し、無事にロープ回収もできました。しかし、これにかなり時間を使ってしまい、3人が1回目の懸垂下降を終えた時点で真っ暗になってしまいました。
    幸い2回目の懸垂下降はスムーズに池の谷ガリーに降りられ、ヘッドランプの灯りを頼りに、右岸を離れないように登り返して池の谷乗越まで。

    さすがに真っ暗な中で北方稜線を歩くのは危険なので、池の谷乗越でビバークすることにしました。なけなしの行動食となけなしの水を補給し、無理やり張ったツェルトの中で明るくなるのを待つ、過酷な我慢大会が夜な夜な開催されたのでした…。

    7/20(日)
    もう無理。体痛すぎ。寝るとか不可能やし。
    明るくなってくるのを期待して3:30頃にBV地発。さらば池の谷乗越。
    思ったより順調に進み、1時間程度で荷物をデポした長次郎のコルまで帰ってきました。
    テントという名のスイートホームを設営し、雪渓の雪を溶かして水を作り、待ちに待った食事です!なんてことないカレーメシが今世紀最高のご馳走になりました。
    この時点で本山行の目的は達成されていたのですが、僕にとってはここからがメインイベント。感動の剱岳初登頂、別山尾根で感動のカニのヨコバイ体験を経て、室堂まで帰るのですが、どうでもいい事なので書かずにおきます。

    NGSさん、 SOTさん、お疲れ様でした!ありがとうございました!