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冬合宿2 北アルプス 蝶ヶ岳1月 30, 2015

山行期間 2015年1月9日(夜)から12日
メンバー SGY,KWI,TKH,IZT,UET,YDA,MTM,MKM,TKD
山行地域 北アルプス
山行スタイル ピークハント

初めての日本アルプスは常念岳だった。雪も無くテントも持たず小屋泊。天候も良かった。それでも高山病でフラフラしながらもなんとか登りきった覚えがある。その時頂上から見た蝶ヶ岳への稜線を見て恐怖を感じた。森林限界をこえて強い風が吹いており、道もかなり細い。アルプスは怖い・・・、そう思って帰路についた。
それから早3年、積雪期テント装備で蝶ヶ岳に挑む日が来た。泉州山岳会74期Bチーム冬合宿、蝶ヶ岳。1年間の努力の成果を見せる時である。今まで途中敗退もあったが是非とも今回はピークを踏みたい。そんな思いと一緒に家を出た・・・。
1/9(金)
深夜に出発地点である沢渡(第二駐車場)に到着。かなり寒い。もちろん地面も凍っている。急ぎテントを張り、仮眠に入る。シェラフはとても暖かかった。
1/10(土)
タクシーに乗り合わせ釜トンネルへ。真っ暗な道を進みいきなりヘッドランプの出番。トンネルを抜けると車道を歩いて上高地まで進む。これから冬山での体験を思うとアスファルトの道も楽しく進めた。

上高地到着
夏は観光客でいっぱいだが、今は自分たち以外だれもいない。観光名所の河童橋も貸切状態である。記念撮影をして次へ進む。


雪が深くなってきた。長い長いラッセルが始まる。荒島岳で練習はしてきたが、どうもうまくいかない。体重のかけ方が悪いのか、足場の固め方が悪いのか、頻繁に雪を踏み抜き無駄な体力を使う。先輩達のアドバイスを頂きつつ徳沢ロッジまで進む。最後の人工物であるロッジで休憩をし、急激に斜度の上がる登山道を見上げる。


ここからが本当の雪山だ。トレースなんてものはない、全て自分達で切り開いて行くのだ。ワカンを装備し、膝まで埋まる新雪の斜面をラッセルで進む。足を蹴り込み、踏みしめ、じんわり体重をかけ、次の足を出す。さらさらの雪はどれだけ踏みしても固まりにくく苦労をする。なんとか進めるか?と騙し騙し進んでいたら熊笹の上に積もっていた雪を踏み抜いた。腰まで埋まり身動きが取れないため、後続の人にラッセルを代わってもらい必死に抜け出す。ただ進むだけではなくどこが安全で楽な道か見極めも必要だと感じた。よくよく見ると変に雪が盛り上がっている箇所がある。小さな木や熊笹の上に雪が降り積もっているのだろうか?あそこは避けよう。


標高1,800m地点
少し平らな場所があり、ここにテントを張った。八ヶ岳で習った雪上のテントの張り方を思い出しながら設置。雪を削り、平に整地、テントを張って、綱やペグで固定。時間はかかるが安全で快適なテントを作るのに必要な事だ。今日の食事は粕汁にとろろご飯。乾燥で粉になったとろろがあるとは知らなかった。粕汁もうまい。身体が温まる。明日の行動中のテルモス、朝食用の水を作り就寝。
1/11(日)
アタック装備で出発、テントは張りっぱなしなので、個別に袋に入れているシェラフとマットの個装袋をテントに放り込む。共同装備の嗜好品も不要との事で放り込む。この時の装備の取捨選択が後に大きな影響がでる…。


長塀尾根
今日も必死にラッセル。先輩からのアドバイスもあり、ピッケルの使い方がわかってきた。限界まで雪に突っ込みながら進むのがコツのようだ。今回は参加できなかったOSMリーダーがラッセルをするのに、ピッケルを両手持ちで突っ込みながら進んでいた姿を思い出す。
皆で交代しながら、ラッセルラッセルまたラッセル。トレースなんてものは無い。自分たちで切り開いて行くのだ。強くなってきた風に備え目出し帽を引っ張り出す。ゴーグルもつけてみたがすぐに曇る、手袋で拭おうとしたら既に凍って霜になっていた。簡単には取れない・・・、ゴーグルの使用を諦める。


蝶ヶ岳稜線
13時頃なんとか稜線まで到達。話には聞いていたがすごい風だ、雪も混じっていて何も見えない。地面と空の境界まで曖昧である。これが噂のホワイトアウトか?耐風姿勢で風が弱まる時間を見計らい、うっすらと見える頂上目指して進む。高山病の症状が出てきたようで頭が痛い、深呼吸をしようと思いっきり鼻から空気を吸い込んだら鼻の穴の中が凍った感触がする。すごい場所に来てしまった事を実感。
蝶ヶ岳頂上
急ぎ写真を撮り、樹林帯に戻る。頂上の先に冬期避難小屋もあるらしいが何よりも早く帰らなければならない。頭痛と焦りで注意力が散漫になっていたらしい。石楠花の上に積もっていた雪を踏み抜く。KWIリーダーに助けて頂いた。


長塀尾根
予想外に風と雪が強い。雪もサラサラなのでトレースが跡形もなく消えていた。未熟な自分たちでは道がわからずSGYリーダーの読図頼みでテントを目指す。フラフラついていく、休憩中もボンヤリしていると、TKHリーダーが心配して行動食や水を勧めてくれる、ありがたい。ふと気がつくと少し薄暗い、そうか冬だから日が短くなっている事を思い出す。あまりはっきりとしない頭で考えているとSGYリーダーが立ち止まり言った。
「ここでビバーグします。」
ぼんやりした頭でもやっと事の重大さに気がつく。確かにもう日が暮れてきている。道はトレースもなくはっきりしない。夜間の行動は自殺行為だ。まだ半分信じられず、もたもたしながらツェルトの設営を手伝う。地面をならし、ツェルトを木でつり、スコップ、ピッケル、カラビナなどある物でツェルトを設営していく。もうすでに外は暗い。そこから、長い夜が始まった。


ビバーク
ツェルトは風雨をしのいでくれた。外にいるよりはもちろん過ごしやすい。このままの積雪量ではうもれる事はないと思う。手持ちの防寒具は全て着た。ダウンのスパッツを持っていたのはありがたい。非常食はちゃんとある。明日の朝食、行動食を残し、食べれる物はすべて食べる。水分はリーダーの持っていたバーナーと食器で雪を溶かす事ができた。非常用のメタよりスムーズに水を作れる。人数分のテルモスに湯を入れ、明日の分を確保する。嗜好品は無かったが、てもりのアミノ酸サプリを溶かして飲んだ。翌日の体調を考えればもちろん良いだろうし、何より普通の湯よりはうまかった。今日できる事はすべてした。あとは寝るだけだ。覚悟はしていたがやはりこれが一番難しい。実は自分は、アタック装備に必要なシェラフカバーを置いてきてしまった。薄い銀マットの上に横にはなってみるがとても耐えられない。ザックの上で三角座りをしてみる。寒さは幾分ましであるがとても寝れそうにない。隣のSGYリーダーは銀マットの上で横になってた。さすがだ・・・。最終的にはザックの上で猫の香箱座りのような形で落ち着く。そのまま少し寝る、寒さで震えながら起きる・・・、というのを繰り返す。人間ここまでガタガタ震えれる物なのかと驚嘆する。少しでも休まなければならないと必死に横になる。そして待ちに待った夜明け。寒さで強ばった体を起こし、撤収して出発。今日はなんとしても帰らなければならない。
帰路
体力のある者が率先して前を歩き、ラッセル。読図のできるSGYリーダーが2番手、GPSを持つMTMさんが3番手につき慎重に進む。後続の者も必死に他の登山者が残していた赤テープを探す。食料、燃料も限られている、これ以上のビバーグはできない。そのまま下って3時間、ついにテントまでたどり着いた。「帰って来れた!」頂上についた時よりもうれしいとの声も聞こえる。テント内で待っていてくれたMKMさんが皆に嗜好品を作ってくれる。ものすごく美味い・・・。帰ってこられた事を実感する。そのまま急ぎ撤収、帰路につく。天気は快晴になり、穂高連峰がとても綺麗だった・・・。(TKD記)


<時間記録>
1/10(土)中ノ湯7:20→上高地9:15→徳沢11:15 →1,800m付近B.C. 14:50
1/11(日)B.C.6:10→長塀山10:55→蝶ヶ岳13:00→2,600m付近ビバーグ16:30
1/12(月)ビバーグ地点6:30→B.C.9:20(テント撤収)→徳沢11:35→明神13:35→上高地15:10→中ノ湯17:10