山行番号 | 5868 |
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山行地域 | 八ヶ岳 |
山行内容 | アイスクライミング |
山行期間 | 2003/01/11(夜) 〜 2003/01/13 |
参加人員 | L北山 名越 |
1月12日、八ヶ岳へアイスクライミングをしに行きました。ルートは三叉峰ルンゼをつめて、最後は石尊稜に上が って稜線へ抜けるというものです。
ふたりともアイスは初心者なので、自慢のギアや借り物のギアをふるって、一日中練習しました。そのため、石尊稜に上がるころには見事な夕日に包まれ、心なごむ一時でした。ま、その結果石尊稜の上部は夜間クライミングとなってしまったのですが。月明かりのもと、快適な岩稜登攀を楽しみました。
(北山 記)
アイスクライミングといえば、今まではせいぜいトップロープにぶらさがって、ピッケルを振り回していた程度。今回は待ちに待った初本チャンだ。しかも2人そろって八ヶ岳は初見参。出発前から胸が高鳴っていた。
1月12日 曇りのち晴れ
三叉峰ルンゼ〜石尊稜 うすら明かりのなか林道を登り出す。赤岳鉱泉までどれくらいか、まったく想像もつかない。いろいろな記録を読む限りでは2〜3時間?なるべく早くつきたいものだ。コテコテに踏みかためられたトレースを黙々とたどると、突如雑然たるテント村が出現した。さっそくツェルト設営。所場代は?ま、集金にくるまでほっとこう。
天気は上々、だけど稜線は雲に隠れてよくみえない。時折サッと晴れて、横岳西面が見渡せる。一見してそれとわかる大同心、その隣の滝は大同心大滝か。今日のルートは……、細かい尾根とルンゼが入り組んで、よくわからん。とりあえず行ってみよう!
中山乗越へむかう一般道からそれて、トレースを頼りに沢を詰める。左から出合う沢を数えて、1本目、2本目。目の前の尾根にたくさんの人が数珠繋ぎに取り付いているのを見て、これが石尊稜に違いないと確信。ひとつ手前の顕著なルンゼにはいる。数mも行くとトレースがなくなり、あとはひたすらラッセルだらけ。やっぱり氷瀑はそうとう埋もれているらしい。
たぶん滝(1段目)の落ち口にあたるであろう、露岩の基部で登攀準備。自慢のギアで身を固め、あるいは借り物のバイル・スクリューハーケンを装着し、いざ登攀開始。取付はシュルンドみたいに口の開いたすきまがあって、細いスノーブリッジをこわしながらはい上がる。期待していた氷は、落ち口で2mほど顔をのぞかせているだけ。だけど、一応スクリューをねじ込んだり、ピッケルをあちこち振り回したり、いろいろと工夫してみる。なんせ、ひとつひとつの道具のセットの仕方や使い方は、試してみないとわからないのだから。
雪のつまったルンゼをどんどんラッセルし、スタンディングアックスで確保体制。2ピッチ目は名越さんがそのまま行って、2段目の滝にトライ。やっぱり落ち口で3mばかりの氷が出ていたのだが、短いものの少しハングしていて手強いらしい。ここは選手交代、確保してくれるすぐ横を、氷を蹴散らしながら登っていく。ハングで両足ともすっぽ抜けて、両手のアックスにぶらさがった時はさすがに冷や汗ものでした。
2段目に再トライの名越さんは、何度かテンションをかけた末、これをクリア。それにしても、雪練以外にスタンディングアックスで墜落を受け止めるのは初めてだ。突き刺しただけのピッケルは油断するとすぐに傾くが、踏みつけたり手で押さえていると、意外と丈夫な支点となることもわかった。また、スクリューでアンカーをつくってみたり、スウィングの角度を工夫してみたり、いろいろ練習しながらのんびり進む。当然時間はかかるが、晴れ渡った青空の下ではまったく気にならず。
3ピッチ目は、またしてもラッセルの後、3段目の滝が現れる。2mほどのちいさな氷だ。ここはもはや要領をつかんだ名越さんが突破していく。だが、ちょうどその時一陣の風が舞い、チリ雪崩が通過して瞬く間に雪だるまと化す。「イヤー、冷たい!」と叫ぶ後ろ姿を見て、僕はひそかにヤッケのフードをかぶってしまいました。
ここから数ピッチ、ラッセルで進んでは氷化した雪面に両手のアックスを突き刺す。アックスを持ち替えたり、メインにつないだシュリンゲを処理したりする動作が、じつにうっとおしい。やっぱりこういうことは、通り一遍の講習会では身に付かないものだと実感。
もはや上部には雪のつまったルンゼが稜線までのびている。適当なとこで石尊稜に上がるのがよさそうだ。20mほどの雪壁状をこなし、夕暮れの雪稜に飛び出す。諏訪湖のかなた、中央アルプス(?)に日が傾き、しばし見上げる雪稜がオレンジに輝く。今日1日分の行動食を一気にほおばる2人であった。
だが、心なごむ一時はすぐに終わり、ほどなくして夕闇がやってくる。わかりきったことではあったが……。
雪稜をコンテでしばし進むと、もろそうな岩稜が露出している。ヘッドランを灯し、「ここからまともに岩登りやけど、いける?」パートナーへ、自分へ、どちらへともつかない確認の言葉を口にする。このあとはスタカット2ピッチ、さらにコンテで100mほどで石尊峰に至る。暗いので時間はかかったが、月明かりに照らされて、安心して登ることができた。それにしても2人の集中力は最後までとぎれることがなく、トレーニングの成果が出ているようで嬉しかった。
このあとは、稜線をたどって地蔵尾根下降。赤岳鉱泉のテン場はすでに就寝の時間を迎えており、そこへ割って入る疲労困憊の2人。本来13時間も歩き回る予定ではなかったのですが、名越さん、毎度毎度ごくろうさま。
1月13日 快晴
硫黄岳 せっかく八ヶ岳にきたのだから、硫黄岳〜赤岳への稜線を縦走しておきたい。半日で戻る予定で出発。
長い長い樹林帯の登り。地図を見ると気が遠くなりそうなくらい、体が重かった。それでも1時間ちょっとで稜線に出ると、横岳の西面が一望の下に見渡せる。大同心に小同心。赤岳の主稜はどれかよくわからんが、阿弥陀北稜、それに北西稜。
硫黄岳を越え、強風のなか小屋をめざして降りていく。逆風になってつらいなあ、なんて余裕はしだいに薄れ、体が吹っ飛ばされそうなほどの強風に息もたえだえ。コルのあたりは特に強く、耐風姿勢もままならず。
今日は昼までには鉱泉に戻りたいところだ。本来この縦走の目的であった概念の把握も十分に達成できた。このままつっこむ意味もあまりないな、と考えて引き返すこととした。ちょっとだけ未練もあったのだが……。
硫黄岳まで登り返すと、さほど強風というほどでもない。コルの部分だけ特別に強かったんやろか。とりあえず来週また出直そう。
もとの樹林帯をぐんぐん下り、赤岳鉱泉まで来ると安心してテルモスのコーヒーを飲み干してしまう。今日はやたらにのどが渇いてたまらない。冬山で、0.5リットルのテルモスを空にするのは初めてだ。それだけ、昨日の疲労が残っていたのだろう。
最後で若干行程を割愛したが、今山行の目的はすべて達したし、満足のいく練習もこなしたし、2日間とは思えない充実した山行であった。
ちなみに美濃戸口の駐車場代もさりげなくブッチしたので、今回はまったく金いらずでした。
(北山 記)
<行動記録>
1/12 美濃戸口 6:50〜赤岳鉱泉 9:20-10:30〜三叉峰ルンゼ取付 11:45〜石尊稜上部 16:30-17:00〜石尊峰 18:30〜赤岳鉱泉 20:00
1/13 赤岳鉱泉 6:20〜赤岩の頭 7:30〜撤退決定 8:20〜赤岳鉱泉 9:35-10:25〜美濃戸口 12:00