白山
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『白山』 |
<山行報告>
初冬に白山を縦走してみたかった。
秋もよいけど雪のある時期こだわった。
私にとって白山はやはり白い姿が一番だ。
2007年11月24日
当初の予定では別当出合より入山、御前峰から四塚山を経由し一里野に下山することになっていた。 直前に大きな寒波が立て続けにやってきた。市ノ瀬からの歩きは嫌だなあなんて思っていたら 直前にはなんと白峰から先が通行止めとの情報。
奇跡的に3連休だけ空けてくれないかなあと悪あがきして、とりあえず現地に向かうも 無情にもやはりゲートは閉じている。これで一里野までの縦走計画はできなくなった。
一里野へと車を走らせる。ピークは踏めないとわかっていても、 白山に近づくなら選択肢はもうここしかない。
岩間までの林道もすでに閉鎖、ゲート前で準備をしてハライ谷登山口へ向かう。 登山口でいきなりくるぶしまでの雪だ。それが膝になり腿になり、 あっという間に腰まで潜りワカンを装着する。
雪の重みで下がった枝が行く手を阻む。薮コギラッセルだ。 湿雪の新雪なので非常に重くやっかいだ。ヤブを漕ぐのにひどく体力を消耗する。
遅々として進まず時間だけが刻々と過ぎる。ようやく檜新宮。 少し進むと白山本峰方面の展望が一気にひらける。みなが歓声をあげる。 青空にぽっかり浮かんだ白き美しき白山。樹氷もきらめく。 ここからしかり場まではまた延々とさらにひどい激薮ブラッセルが続く。雪と藪との格闘だ。 ある時はほふく前進。
しかり場にと到着したのはなんと15時。登山口から実に7時間以上のラッセルだ。
ここでスキー場から登ってきた2人組パーティーと出会う。8時に出発したとのこと。
屈強そうな男性だったのでこれでラッセルもパワーアップかと思いきや、
「お先にどうぞ」
と言われその後彼らの姿を見ることはなかった。
実はここからが核心の始まり。延々と続く小さなアップダウンの繰り返しと薮ラッセル。 地形図には現れない細かいアップダウンが多い。もがけどもがけど距離を稼げない。 どんどん陽が傾いていく。夕日に染まった白き山々が美しい。 今日中になんとか避難小屋まで行ければと思っていたが・・・
やがて日が落ち暗闇となる。それでも月明かりに照らされ黙々とラッセルは続く。 右手には金沢だろうか、夜景が美しい。そろそろみなの体力も限界だが、 痩せ尾根ゆえなかなか幕営適地が見つからない。 なんとか一張り分のスペースを見つけて整地作業。
テントで一息ついたのはすでに20時だった。 食事が終わるとみんな疲れのあまり睡魔に襲われる。 2時間ほどの睡眠で12時間行動しかも延々とラッセルだったのだから仕方ない。 厳しいけど明日朝3時起床を決めてシュラフに潜り込む
2007年11月25日月と星が輝く下、出発。少し登って下ってまた登り返したところが小屋だった。 小屋に荷物をデポしてアタック装備で出かける。
空も明るくなってきた。美女坂の長く急な登りが本日の核心だろう。 薮の上にふんわり新雪が乗っているだけなので気をつけないと落とし穴に落ちてしまう。 締まっていない深雪を歩くのは本当に大変だ。 小屋から美女坂の頭までなんと2時間もかかってしまった。
ここから尾根は広々としたなだらかな傾斜にかわる。 雪に埋もれた針葉樹の森が広がる。木が密集していて意外とルート取りに難儀して時間を食う。
しばらくすると突然ワカンが沈まなくなる。ワカンの爪がサクサクと心地よく刺さる。 雪庇が成長し始めている。雪庇の先から強風に乗って雪煙が舞い上がる。 シュカブラの模様が美しい。シュカブラの白い海のはるか向こうに白山が浮かぶ。
昨日のことを思えばずいぶん四塚山には近づいたが、まだまだ気の遠くなるような距離がある。 これは四塚山登頂は到底無理だと諦める。しばらく進むとまた深いラッセルとなる。 風がよけられる場所で休憩。ぼーっと白山を眺める。神々しく美しい山だ。 これだけ雪が似合う山もそうあるまい。油池手前にて撤退決定。
ふたたびシュカブラの海を歩く。急ぐことはない。 クラストした雪の感触を、雪煙の描く模様を、シュカブラを、のんびりとそこに存在する全てを楽しむ。 帰りはずっと雪の時期に見てみたいと思っていた百四丈滝を探す。 滝壺にはすでに雪が堆く積もり穴を開けている。小屋に戻ってのんびりくつろぐ。
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